■ 日本におけるNPOの現状      

 
~NPO法人格の取得とその後~



ファンドレイジングの観点からみた現在の国内NPOを一言で表現するならば、
「不自由」 が最も的確ではないかと思われます。

活動領域についての不自由、実際にNPO法人としての認可を受けるうえでの不自由、税制優遇の内容とそれを受けるに至るまでの不自由など。

社会活動をはじめることは簡単であり、任意団体(法人格を有さない団体)の段階ではさほどの制限は受けません。しかしNPO法上の規制を受ける特定非営利活動法人(NPO法人)格を取得するとなれば、超えなければならないハードルが増えてきます。



《時間と手間の問題》


一般の人がNPO法人を設立するには8ヶ月~1年ほどかかるといわれます。これは決定事項の多さに加え、求められる書類作成の量が非常に多いためです。設立認証だけでなく、登記手続、さらに事業を継続する限り、一定の報告書類の提出が義務付けられます。日本のNPOは書類との戦いとも形容されるほどです。

書類も一発で通ることは少なく、役所に何度も通って手直しをさせられるのが一般的です。



《NPO法人格の取得に立ちはだかる規制》


NPO法人として認められない活動例は、一般的にあまり開示されませんが、法定事由として決められており、以下のひとつにでも該当してしまえば認められません。


1. 営利を目的としている 

ここでいう営利とは、残った利益を社員である株主に分配しないという意味です。したがって、寄付や助成金に依存せず収益活動によって事業資金を得ている 「事業型NPO」 は認められています。

2. 社員の資格条件が厳しすぎる 

社員とは議決権を有する正規メンバーのことで、従業員のことではありません。総会にでることも可能な立場である社員になるための条件が不当であると判断されれば法人格を得られません。

3. 役員中に三親等内の親族および配偶者が3分の1以上いる 

役員とは理事・監事のことを指し、基本的には社員の中から選ばれます。役員の中に自分と家族を合わせて3分の1を超えてはいけません。

4. 役員総数の3分の1以上が報酬を受け取っている 

全員に報酬を与えるならば通常の企業と変わらないという観点からの規制ですが、事業型NPOにとってはネックになる部分です。

5. 宗教活動や政治活動を主たる目的としている 

宗教的要素があれば宗教法人化を求められます。政治については選挙の公平性に配慮しての規制です。

6. 特定の公職者(候補者を含む)又は政党を推薦、支持、反対することを目的としている 

NPOらしからぬとして、特定の人物にしぼった活動は認められません。

7. 暴力団関係者であること 

非営利を隠れ蓑にした悪徳NPOに対する規制は、NPO法改正によって更に厳しくなっています。



《社会通念の壁》

先に述べたような法人格取得の法定事由をクリアすれば、一般的にNPO法人申請はほとんどが認証されるといわれています。

しかし、NPO活動体のなかには、一般的に日頃スポットがあたらない領域での問題解決を目的とした 「ニッチ事業」 も少なくありません。このようなNPOの場合、活動が思うように理解されない、寄付が集まらない、NPO法人格を取得申請しても認証されないという例が見受けられます。

●NPO法人申請不受理の例 

新潟県にあるNPO団体 「ホワイトハンズ」 は身体障害により1人では自慰ができない人(主に脳性まひ患者)への射精介助を提供している。

2008年4月から活動を本格化させ、NPO法人申請を提出するも、不受理。行政側の理由は 「射精介助は、社会通念上、認められない行為である」 とのことだった。



《既存団体の壁》

すでに社会に根ざした既存の団体が存在する場合、同業種に新規参入しようとする団体が圧力を受けたり、誤解を招くことがあります。このような場合、法人格取得以前の問題として、活動を制限される、理解者はいても協力者があらわれない、といった事態がおこります。

●新規参入団体の例 

スポーツNPOとして2006年に設立された 「日本ボクシング機構(JBO)」 は、ボクシング競技の普及・発展を目的として活動を開始したが、利権を守ろうとする既存団体の理解は得られず活動を制限される。現在もNPO法人や公益法人としての申請には至っていない。



《法人格取得後の壁》

晴れてNPO申請が受理され、法人格を取得しても、維持できずに解散したり内閣府からNPO法人の認証を取り消されるケースもここ数年増えてきています。NPO法人を隠れ蓑にした営利活動や犯罪行為を防止すべく、認証基準が厳格化しているためです。

●解散・認証取消の理由 

2010年2月末のデータでは、解散したNPO法人3413法人のうち、解散理由の1位は 「社員総会の決議」 。この決議に至る要因の大半が 「財政問題」 といわれている。

また、解散理由の2位は 「設立の認証取消」 で、477法人にのぼる。取消理由の多くは事業報告等の提出を一定期間(3年以上)行なわないことによるもの。事実上の自然消滅も多いと思われる。



《悪徳NPOの存在によるイメージ悪化》

市民活動やボランティアをする側からみればNPO法人は国からのお墨付きを得て社会の諸問題を解決すべく運営されているように映るでしょう。しかし 「NPO」 という言葉から胡散臭さを感じる人が多いのもまた事実です。その原因は様々ありますが、最たる要因はメディア等で報道される 「悪徳NPO」 の存在です。

●NPO法人認証取消となった悪徳NPOの例 

2006年12月、認証取消となった 「NPO法人亜細亜人権協議会」 は、当初からNPO活動を目的として設立されておらず、設立後もNPO活動は行なわず、フィリピン人女性を不法入国させて飲食店に斡旋するなどしていた。